2016年12月 イノシシ猟(くくり罠)

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2016年12月 イノシシ猟(くくり罠)


 

きょうの巡回で、2016年の猟期前半のククリ罠猟をおえました。
この猟期はシカは獲らず、ひたすらイノシシを狙ったワナ猟でした。

 

 

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11月15日の解禁から今朝までの45日で、21頭のイノシシを相手にしました。その数のイノシシを獲ってきて、かすり傷程度の怪我しかせずに、いま無事に生きていられることを本当に嬉しく思います。

 

 

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何度も怖い思いをしました。圧倒的に強い相手たちなので、ぎりぎりのところでやりとりをしてきました。若いからと力や勢いに任せるのでなく、迷ったときには引く勇気を持てと事前に諭してくれていた師匠たちの存在は大きかったです。現在も鼻捕りによる二点固定をしていますが、来年はもっとトメサシの安全性を高めたいと思います。具体的には、ワイヤーの太さを4ミリから5ミリに上げ、6×24を7×24に変更、さらに仕留めの道具の性能を上げる予定です。

 

 

 

一歩引いた例でいうと、今朝は、ワナに掛かったイノシシを自分で仕留められず人生で初めて鉄砲での仕留めを依頼しました。100キロ近いオス。サイズのことよりも、これほど自分に自信のあるイノシシと対峙したのは初めてでした。可動範囲が2m以上あるのに、暴れることもなく落ち着いて座り、顎を鳴らしながらこちらを睨むイノシシ。「いつでもこの牙で切って殺してやるから、こっちの間合いまで入ってこいよ」と言われている気がしました。自意識過剰で被害妄想かもしれない、でも僕はそう感じた。

 

 

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強いやつほど、穏やかで落ち着きがあるのかどうかは知りません。でも、オス同士。彼の強さは、僕にひしひしと伝わりました。長柄の玄翁とナイフでは、勝てる気がしなくなりました。

 

 

いつしか自分のなかに。このイノシシを「やってやる」という気持ちよりも、怯みと怯えのほうが遥かに強くなりました。それも初めてでした。悔しくて、気持ちを奮い立たせたくて長時間やりとりはしました。立ち位置を変えたり、距離を詰めてみたり、あれこれしましたが一度も間合いに入って鼻捕りをすることもできないまま、懇意にしている腕利き猟師さんに射ってもらうことを決めました。あのまま無理していたら、やられていた気がします。あらためて、こういった世界で一歩引く勇気の大切さを学びましたし、もっと臆病者で在ろうと思いました。野垂れ死にしないために。

 

猟期前の目標は年内で20頭に設定していました。今まで達成したことのない数字なので、やる前からギリギリかなとすこし弱気に思う部分もありました。イノシシが少ないという周りの声もありました。でも、解禁から丁寧に掛けた罠に次第に獲物が掛かっていくにつれて技術の向上に対する確かな自信もでき、それでもなお苦しい時期もありましたが諦めずに毎日山を歩いて見回り、ときには罠を増設し、徹底的にやったことで出せた数字だと思います。

 

 

 

目標に到達したのが27日でしたが、その日に相棒に言われた言葉があります。「目標は超えるためにあるんだから、20頭で満足してたらだめだ。」目標到達の喜びを噛み締めていた僕には、冷水ぶっかけられたくらいに良く効きました。そのうえでの追加一頭は素直に嬉しく、男なら徹底的にやっていきたいな、とあらためて思ったのでした。

 

こうして猟期の前半を振り返ってみると、うちの肉が欲しいと言って下さるお客さま、妻をはじめ支えてくれる家族や相棒、周囲の方々ににあらためて感謝の気持ちが湧いてきます。

 

 

 

そして、僕に惜しみなく技術を受け継がせてくれた師匠たちには頭が上がりません。あの人たちが磨いてきた技を僕が確実に受け継ぎ、できることならもっと高めて良いものにして山村の伝統文化のひとつである猟技を次世代に継いでいきたい。そして、野性の力に溢れたイノシシ肉を丁寧に手掛け、必要として下さる方々に少しずつ届けていきたい。そう思っています。

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ちっとも更新をせずにご心配おかけしました。来年からは文章を紡ぐことを大事にしたいと思っていますので、楽しみにお待ちください。

 

あつたや代表  熱田安武